自分らしい自分に巡り会えたからこそ、輝ける!

自分らしく生きるLGBTたちのメッセージを、瀬戸内から世界に届けます。『瀬戸内LGBTプロジェクト』が瀬戸内のLGBTにとって、大きくポジティブな流れを生むきっかけになれるように、コラムでは、香川のLGBTの方々の今を発信します。

この活動はLGBTの支援者(アライ)も参加しています。

自分らしい自分に巡り会えたからこそ、輝ける!
郵便局員 京ちゃん(高木健一さん) 
聞き手 岡 薫(アライ)

今年1月、京ちゃんは、苦節146回目にしてようやく郵便局員の「正社員登用試験」に合格。その喜びを「泣き崩れてもいいほど嬉しい」とSNSで発信すると、LGBT仲間からも祝福のコメントが寄せられました。

京ちゃんは、男性から女性として生きる道を選んだトランスジェンダー。現在、性別適合手術を受けるため、準備をしています。
実は、京ちゃんが「自分らしい」=「自分は女性」だと気づいたのは、つい最近のことなんです。小さい頃は、外遊びが大好きで、女の子と連れ立って遊ぶこともなければ、ズボンや黒いランドセルに違和感を感じることも、姉の履いているスカートに憧れることもありませんでした。中学生の頃、TVに映るニューハーフを見てあんな風になるのかな?と思ったことはあったそうですが、好きな男の子がいるわけでもないし、「女の子になりたい」という思いが頭をもたげては、「自分は違う」と、その度に心の思いを封印してきました。男の子を演じながら、本当は心の中でせめぎ合いを続けていたことに気がつくのは、もっと後になってから。

 そんな京ちゃんに転機が訪れたのは4年前。仕事で落ち込んだ時に、それまでの人生を振り返えっていると、「女の子になりたい」思いが再び頭をもたげてきたそうです。今まで、自分で叩き潰してきたはずなのに、「どうして、こんな時になっても、そう思うんだろう」と改めて自分に問うと、初めて「男の子という偽りの自分を演じていたからこそ、心が落ち着かない」ことに気がついたそうです。そして「女の子になりたい」というより「女の子なんだ」と自分自身で認めると、心がピタッと落ち着いたそうです。

 それから、インターネットで、女性ホルモンの錠剤を注文し、ゆっくりと本当の自分を受け入れ始めた京ちゃんは、ひとりシンガポールに旅に出ました。

(シンガポール旅行=男の子の卒業旅行)

当時の写真を見つめ、「今思えば、これは、男の子の卒業旅行やった」という京ちゃん。
と言うのも、帰国直後、偶然、手にした雑誌に掲載されたセクシーゾーンの菊池風麿さんに一目惚れ。40歳にして初めての恋を経験した京ちゃんは、女性に変わることへの迷いを吹っ切り、一気に性別適合手術を受けるべく、専門病院の門戸を叩き、具体的な行動を開始したのです。

「風麿くんの写真にズキュン!!ズッシーンときたんです。何だろう?この感覚・・・恋だ!って思ったら、私は、女の子なんだ!って本当に、合点がいきました。そこから女の子への道、一直線。セクゾの菊池くんは、恩人なんです」
(初恋の衝撃を語る京ちゃんは、少女のようで、とってもかわいい!)

そして、女の子の道へ駆け出した京ちゃんは、内向的で人と関わることを極端に嫌がっていた男性時代とは別人のように、積極的に、人と関わり合うようになりました。家族や職場のメンバーにも「女の子」であることをカミングアウトし、年に1度は、東京に赴きプロのカメラマンに「今の京ちゃん」を撮影してもらっているほど。さらに、去年10月高松市で開催されたイベント『OUT IN JAPAN SETOUCHI※』 にもモデルとして参加。香川のセクシュアルマイノリティを支えるグループ『プラウド』のメンバーとも積極的に交流し、心の内を吐露できる仲間とも出会いました。
(※LGBTなどのセクシュアルマイノリティにスポットライトを当てて、カミングアウトしたいと願う人を応援するプロジェクト)

(東京で撮影した“京ちゃん”)

そんな京ちゃんは、男性として生きてきた自分を否定することはありません。

「あの頃の自分を “健一さん”と呼んでいます。不承不承、男の子を演じていたけれど、否定はしたくない。今の仕事(郵便局員)に出会えたのも健一さんのおかげ。今の仕事は、私にとって天職なんです。そして、健一さんがいたから、今の京ちゃんがある」と。

そして、今年4月からは、正社員として、郵便局で働くことが決まっています。カミングアウトはしましたが、戸籍上はまだ男性であるため、今はまだ男性ロッカーを使用していますが、女性ロッカーで着替える日も、そう遠くありません。

正社員としての登用が決まった日、京ちゃんは、SNSのコメントをこう締めくくっています。

「これまで以上に責任は増します。それでも私は良いと思っています。自分をもっと磨くための修行だと自分に言い聞かせています。みなさん4月以降は一皮向けた「京ちゃん」になるので宜しくね」

40歳でようやく出会えた「“京ちゃん”という自分」。“京ちゃん”として話す瞳は、キラキラと希望に満ち溢れています。セクシュアルマイノリティ の人に限らず、自分らしい自分に出会うため、自問自答している人は、少なくありません。自分とは一体何者なのか?と言う問いに向き合い続けたからこそ出会うことができた京ちゃんは、清らかで芯の強い、素敵な女性です。