言葉にとらわれないで、「誰かにとってのワタシ」から「私」へ

コラム「ここにいるよ」とは・・・
自分らしく生きるLGBTたちのメッセージを、瀬戸内から世界に届けます。『瀬戸内LGBTプロジェクト』が瀬戸内のLGBTにとって、大きくポジティブな流れを生むきっかけになれるように、コラムでは、香川のLGBTの方々の今を発信します。
この活動はLGBTの支援者(アライ)もサポートしています。

言葉にとらわれないで、「誰かにとってのワタシ」から「私」へ
団体職員 佐藤志保さん 
聞き手 岡 薫(アライ)

 「私、写真に撮られることが苦手なんです。だから、すっごく緊張しました。」そう話すのは、今年、社会人になったばかりのシロちゃん。シロちゃんは、今年10月、高松市で開かれたイベント『OUT IN JAPAN SETOUCHI』にモデルとして参加しました。

OUT IN JAPAN SETOUCHI』は、LGBTなどのセクシュアルマイノリティにスポットライトを当てて、カミングアウトしたいと願う人を応援するプロジェクトで、イベント当日は、世界的に有名な写真家、レスリー・キーさんが、香川県を中心に集まった5057人のセクシュアルマイノリティのモデルを撮影しました。その中の一人が、シロちゃんこと、佐藤志保さんです。

恥ずかしそうに首を横に振りながら撮影当時を思い出す様子からすると、「写真が苦手」は、かなり「苦手」な部類に入るのでしょう・・・。それでも、シロちゃんは、レズビアンであることを世間にカミングアウトすることを決めました。

 「半分鼓舞で、半分決意の気持ちで参加しました。(イベントに参加して) レズビアンであるということも含めて、自分を貫いて生きる決意ができました。」

と、シロちゃん。 

(レスリー・キー氏に撮影してもらうシロちゃん)

 シロちゃんが、同性愛のことを知ったのは、中学生の頃。当事者がインターネットの掲示板に、幸せそうな様子を綴っているのを見て、そんな生き方もありだと思ったそうです。そして実際、高校3年生の頃から約2年間、女性と付き合っていました。しかし、男性とも付き合った経験もあるので、「私は男性とも付き合えるんだ」と自分に言い聞かせていました。しかし、就職活動をきっかけに、この先の人生を描いてみると、伴侶として思い浮かぶのは女性だけ。「男性とも付き合える」という自己認識は、「性別関係なく、人を好きになれるんだね」と他人から同性愛を否定されないために、自分の中で作っていた逃げ道だったと気付いたそうです。

1年前までのシロちゃんを知る人は、「まるでロボットだった」と言います。

「『こうしなければいけない』という規範意識が強い上に、他人から見える自分の姿ばかり意識していました。『周りの人が求める佐藤志保』という人物像を自ら演じていたんです。その評価が本当の私に向けられたものじゃなくても、当時の私は、他人から褒められてようやく『私は存在していても大丈夫なんだ』と思えていたから・・・。だから、教育学部に進学して、そのまま教師になることが私の歩むべき道だと疑いませんでした。でも、教員採用試験の面接で、『どんな子供を育てたいか』という、教師の核となる最も大事な部分が抜け落ちていることに気付かせてもらって。そこで初めて、自分の人生は、自分の意思でちゃんと決めようと思えたんです。きっかけのことを考えると、子どもにも教員の方にも本当に失礼だったなと申し訳ない気持ちでいっぱいになりますが、目を覚まさせてもらったことに感謝しています。」


そして、誰かのイメージに自分を縛りつけて生きるのではなく、レズビアンであることも、何事も完璧にできないことも、丸ごと自分で自分を受け入れると、まるで「生まれ変わった」ように感じたそうです。

 「言葉の持っているイメージは強いと思います。極端な話、ある言葉によって連想されるイメージだけでその人を判断することもありますよね。例えば、『メガネ』イコール『真面目』とか、『金髪』や『短ラン』イコール『ヤンキー』とか、容姿を指す言葉で『こういう人だろう』って決めつけちゃうパターン。実際はそうとは限らないにもかかわらず、です。だから『私はレズビアンです』って言うと、伝えたいのは『恋愛対象が女性です』ということだけなのに、『男嫌い』とか『性に奔放』だとか、私の意図していない形で解釈されたり、そもそも伝えたいことが伝わらなかったりするんじゃないかなって。でも、『レズビアン』という言葉を使わなきゃいけないことはないし、それが『シロ』の全てではないとも思います。どんな言葉で修飾しても本質は変わらない。私は私なんです。そして、私が私として生きるためには、他人とも自分とも正面から向き合う必要があると感じています。今回のイベントを通して得たのは、誰にも『私』を歪めさせないために、弱い自分と闘い続ける覚悟です。」

OUT IN JAPAN SETOUCHIのラッピング電車内で)

セクシュアルマイノリティという言葉に対して、まだまだ世間のイメージは、不確かで、マイナスなイメージを持つ人も多いかも知れません。だからと言って、レズビアンという言葉に縛られる事なく、「私は、私」と堂々と言えるシロちゃんは、とても魅力的です。そして、一歩踏み出し、カミングアウトしたシロちゃんは、OUT IN JAPAN SETOUCHIをきっかけに仲良くなった方と交際を始めました。恋人のためにも、「もう迷わない」と心に決めたシロちゃんは、うらやましいほど、輝いています!